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2009年5月 8日 (金)

ダイワハウチュでいいでちゅか?

「ダイワハウス」と言うべきところで、なぜか赤ちゃん言葉になってしまう、大和ハウス工業株式会社のテレビCMがある。
 指摘されると、俳優の役所広司さんは、ムキになり、
「言ってないよ!」
 相手が映画かドラマの、年上の監督であっても、そこだけため口になる。
 監督は、まじまじと見ながら、心の中だけでつぶやく。
「なんで、ダイワハウチュ、なんだ。役所君…」
 ぼくはアパートの部屋でひとり、風呂上がりの缶酎ハイをストローですすっていた。酔いがまわると、脳性まひの苦痛が緩和されてくる。楽な気分でテレビをみていると、このCMが流れ、吹き出しそうになった。
 どうしてムキになって、否定するんだろう。まわりはなぜ、そんなに気を使うのか。いろいろ想像し、おかしくなった。
「なんでここで…」
 しっかり言いたいところで、ちがった言葉になり、あとでため息が出ることは、ぼくもよくある。だから、このCMが、なんとなく、引っかかったのかもしれない。
 舌がうまく回らなくなるのは、脳性まひという、運動神経の障害があるからだ。
 ある看護学校のお祭りに、何人かで行ったときもそうだった。
 学校の廊下の端で、電動車いすでぼうっとしていると、通りがかりの髪の長い女の学生さんに声をかけられた。やさしそうな笑みを浮かべていた。
 お話ししながら、学生さんの制服にぬいつけてある名前をみる。ぼくは、「○○さん」と言おうとした。ところが舌がうまく回らず、
「○○ちゃん」
 となった。
 よりによって、会ったこともない女のひとの名前のあとに、ちゃんだなんて…、しまった! と思う。
 けれどもなぜか、気にしているのは、ぼく本人だけだ。学生さんは、あたりまえのように、にっこりしながら、そんなぼくの話し相手をしてくれているみたいだった。
 言葉の障害で、だいぶ知能も低い、というふうにみえていたかもしれない。それなら、それでもかまわない。女の学生さんはそれで上から見くだす態度になるわけでもなかった。そんなことより、この学生さんには、それなりの心づかいさえあった。やさしい人で、よかったなぁ、と、ぼくはそれが身にしみた。
 多少の誤解なんて、気にしたところで、なんにも始まらない。逆に、完ぺきに理解し合える人との関係なんていうのも、しょせんは、あり得ないものだろう。くよくよするのは、よそう。
 ぼくも、舌がうまく回らず、赤ちゃんの言葉になっても、CMの役所広司さんみたいに、あたりまえにしていよう。
「ダイワハウチュで…」


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